第1章: はじめに:60代からの住まい、迷いませんか?
定年が近づくと、ふと頭をよぎるのが
「この家に一生住み続けて大丈夫だろうか?」という問いです。
私自身、60歳を迎えた頃に衝撃的な出来事がありました。
3階建ての実家で一人暮らしをしていた母が、大腿骨を骨折し入院。退院後は階段の上り下りができなくなり、やむを得ず老人ホームに転居することになったのです。
幸い、今の自分も家族も階段の上り下りに支障はありません。
けれど、「その日」は確実にやってきます。私たちの住まいも3階建ての戸建て。
今のうちに将来を見据えておく必要があると思い、いろいろと考えました。
- 階段は将来、負担になるのでは?
- 子どもたちは戻ってこないのでは?
- もっと便利な場所に移るべき?
- 生活費を抑えるために郊外移住という選択は?
そこで、同じような世代の先輩たちの声も参考にしながら、
現実的な選択肢を「消去法」で絞っていくことにしたのです。
第2章: 消去法で考える「終(つい)の棲家」3つの選択肢
✅ ① 戸建てを売って、駅近マンションへ
今住んでいる自宅は駅まで徒歩12分。駅に近いマンションに住み替えれば、階段なしでエレベーター完備。買い物も通院もラク。家賃も発生しない。
──と、一見すると理想的なように思えます。
ところが、実際には想定外の出費が待ち受けています。
【転居時の初期費用:合計 約318万円】
- 売却手数料(3,000万円の家):約96万円
- 購入手数料(3,000万円のマンション):約96万円
- 自宅の解体費用(築30年・90㎡):約120万円
- 引越し費用(同一市内・近距離):約6万円
※古い木造住宅はそのままでは買い手がつきづらく、更地にして売却が一般的です。
【ランニングコスト:20年間で約1,452万円】
- 管理費(月17,730円):4,255,200円
- 修繕積立金(月20,250円):4,860,000円
- 駐車場代(月22,500円):5,400,000円
【物件価格の差:マンションは戸建てより11%割高】
- この20年で私の住んでいる地区のマンション価格は+67.2%、戸建て(土地)は+51.8%
- 同じ3,000万円の物件でも、実質的に462万円の差額が生じています つまり同じ築年数、同じ広さの家を買うには、この差額を上乗せして支払う必要があります。
💰 トータルで20年間の持ち出しは2,232万円。
これはまさに「老後2,000万円問題」の備えが吹き飛ぶ金額です。
安心のための住み替えが、逆に資産を大きく目減りさせてしまうリスクもあるのです。
賃貸という選択肢
もちろん賃貸に住むという方法もありますが、定年後には以下のデメリットも大きいです。
- 毎月の家賃を死ぬまで支払い続ける必要があり、年金暮らしの家計を圧迫
- 孤独死リスクを懸念した大家さんから契約を断られるケースが多い
✅ ② 地方移住というロマン
「定年後は、自然に囲まれてのんびり暮らしたい」
そう考える方も少なくありません。特に男性に多い印象です。
たとえば首都圏から150kmほど離れた、山の見える内陸エリア。
私の友人も別荘を所有しており、話を聞くうちに、こんなシミュレーションが見えてきました。
【地方移住にかかる現実的コスト】
- 暖房費(冬季):電気代+灯油=年間 約7万円 → 20年で140万円
- ガソリン代(車移動):年間 約7万円 → 20年で141万円
- 古民家リフォーム:耐震・断熱を含め 最低500万円〜
- 除雪費:依頼回数4回/年 → 年14万円 × 20年=280万円
▶ 合計:約1,061万円
駅近マンションに比べれば半分程度の出費です。
しかし、**お金には表れない“壁”**も存在します。
【地方生活の落とし穴】
- 贈り物文化のプレッシャー
地元の方から野菜をもらえば「お返ししないと陰口を叩かれる」…という暗黙のルールが。 - 自治会や地域活動の義務感
自治会長、清掃、祭りの準備など「断れない空気」がある。 - 医療・介護サービスが限られる
救急病院まで車で30分、デイサービスも定員いっぱいで予約困難。 - 交通・買い物の不便さ
スーパーは車で20分。バスも少なく、免許返納後の生活は大きな制約に。 - 通信インフラが不安定
光回線が未整備なエリアもあり、テレワークやオンライン手続きに支障。 - 「よそ者」扱いされる孤独感
噂話が広まりやすく、地域に馴染めないと孤立するリスクも。
✅③ 高サ住(高齢者向けサービス付き住宅)という選択肢
母の介護施設を探していたとき、“高サ住”という住宅が目に留まりました。これは高齢者が安心して暮らせるよう、バリアフリー構造に加えて、見守りや生活相談などのサービスが付いた賃貸住宅です。主に自立~要支援レベルの方を対象としており、介護施設とは異なります。
※要支援:軽度な支援が必要な状態(支援1・2)。介護予防を主眼にしたサービスが提供されます。 ※要介護:入浴・排泄などの介助が必要な状態(介護1~5)。より重度の介護を必要とします。
【メリット】
- バリアフリー設計で転倒リスクが少なく、安全性が高い
- 見守り・生活相談サービスが常駐し、安心感がある
- 自宅に比べて転居がしやすい(賃貸形式)
【デメリット】
- 要介護状態になると退去を求められることがあり、「終の棲家」にならない可能性
- 私の県の平均月額費用は約17万円、20年で3,400万円と高額。年金のみでは長期滞在が困難
- 介護サービスは外部事業者に委託する形で、連携が不十分な場合も
- 居室面積が狭く、生活空間が制限されがち
- 認知症や医療的ケアが必要になると入居継続が難しいケースも
このように、費用面の負担が重く、将来的な退去リスクもある高サ住は、慎重に判断すべき選択肢です。転居が“終の棲家”ではなくなるリスクを考えると、月額費用と介護対応力をしっかり見極めることが重要です。
第3章:私が出した答え──「戸建てに住み続ける」+「必要になったら施設へ」
すべての選択肢を検討した結果、私の結論はシンプルです。
「健康なうちは慣れ親しんだ戸建てに住み続け、必要になったら老人ホームへ」
つまり、健康寿命の間は住み慣れた自宅で過ごし、介護が必要になったときには施設の力を借りるという、段階的な移行型のプランです。
ただし、戸建てに住み続けるにはいくつかの準備と工夫が必要です。
第4章:戸建てに住み続けるための工夫と備え
✅ 「階段がきつくなる問題」は今のうちに対策を
① 健康寿命を延ばす工夫
厚生労働省の発表によると、
- 平均寿命:男性81.09歳、女性87.14歳(令和5年)
- 健康寿命:男性72.57歳、女性75.45歳(令和4年)
健康寿命と平均寿命の間には、約10年の差があります。この期間が、階段の上り下りが困難になる「リスクゾーン」です。
母が入院中にリハビリ担当の理学療法士に聞いたところ、大腿骨骨折の予防には次の3つの運動が効果的だそうです。
- スクワット(椅子立ち上がり運動)
- 毎日30分のウォーキング
- 階段昇降や踏み台昇降運動
私もこれらをすでに実践中。歯磨きのように生活習慣にしてしまえば、無理なく続けられます。
② バリアフリー工事
母いわく、階段の下りが特に怖い。ふらつきやすい朝は転落リスクが高まります。そこで重要なのが「手すり設置」。
これは介護保険を使って補助が受けられます。
- 対象:要支援1~2、要介護1~5に認定された方(原則65歳以上)
- 補助額:生涯上限20万円(使い切らなければ複数回利用可)
- 補助率:原則90%(自己負担10%)※所得により20~30%負担の場合あり
- 注意点:事前申請・ケアマネの計画書・工事前後の写真提出が必要
さらに、要介護度が重くなれば再度20万円の枠が利用できる場合も。
✅ 【重要】リフォームは定年前にまとめて実施を
年金生活に入ってからの大規模リフォームは心理的にも金銭的にも大きな負担です。
私の場合、築28年の3階建て戸建てに対して定年前に以下のリフォームを実施しました:
- 外壁・屋根塗装、ベランダ防水:150万円
- ガラスサッシ4ヶ所交換:60万円
- 内壁塗装(DIY):5万円
- 床の張り替え2室(DIY):5万円
- 合計:約220万円
DIYを取り入れることでコストを抑えることができました。こうした出費を抑えた分、資金をインデックスファンドで運用し、将来の施設入居費用に備えています。
✅具体的な方法はこちらです👇



第5章: 有料老人ホームという「最終ステージ」の準備も忘れずに
① 自宅介護は共倒れリスクが高い
「親の面倒を自宅で見たい」という気持ちは尊いですが、介護離職→収入減→心身の消耗という悪循環に陥るケースも少なくありません。親としては「子どもに迷惑をかけたくない」が本音。動けなくなったら、専門の施設に頼るのが最善です。
② 費用は投資+年金でまかなう
有料老人ホームの入居費用は数百万円単位。街中よりも郊外の施設のほうが手頃です。
- 入居一時金:インデックス投資で形成し、そこから拠出
- 月額費用:年金+投資資産の取り崩しで対応
母が入居している施設はイベントが豊富で食事も充実。友人もできて楽しそうです。
③ 平均入居年数を知る
- 特別養護老人ホーム:約3.5年
- 介護付き有料老人ホーム:約3.2年
- 住宅型有料老人ホーム:約1.9年
- 有料老人ホーム全体:約4.1年
平均して「約3~4年の暮らし」となりますが、これは“最期の数年をどう過ごすか”という人生設計と密接に関わっています。
終章:終の棲家に「正解」はない。でも、「準備」はできる
ここまで3つの選択肢──マンション住み替え、地方移住、高サ住──を検討し、それぞれのコストやリスク、現実を見てきました。そして私自身は「戸建てに住み続け、いずれ必要になったら施設へ」という選択をしました。
どの選択肢にも、メリットもあれば落とし穴もあります。大切なのは「どれを選ぶか」ではなく、「自分や家族にとって何が現実的で、何を準備しておくべきか」を考えることだと感じています。
健康寿命の間は、自宅で自由に暮らす。そのために、身体を鍛え、住まいを整える。そして、いざという時は迷わず施設に頼る。その費用も計画的に準備しておく。
“終の棲家”とは、建物のことではなく、「最期まで自分らしく生きられる場所」のこと。
それを守るための選択肢と準備こそが、定年後の人生において一番大切な“住まい”のテーマなのかもしれません。
次回予告:リフォームで40万円得した実録を公開!
実は私は、定年前に実施したリフォームで、40万円の補助金を受け取りました。
「どこでその制度を知ったのか?」
「どんな工事が対象になったのか?」
「申請の流れや、気をつけるべき落とし穴は?」そんな実体験をまとめたnoteを、次回【有料記事】として公開予定です。
📌記事タイトル:
✅「60代でも間に合う!住宅リフォームで40万円の補助金をもらった実録」「家は大切だけど、お金も大事」
定年前の今こそ知っておきたい内容です。ぜひご期待ください。
定年後の準備は第2の人生へのプレゼント。さあ始めましょう!

定年準備中の64歳サラリーマン。
実体験をもとに、定年後のお金・健康・暮らしについて発信しています。 同じ立場の方が、少し楽になるヒントを届けたい。


コメント