第1章 老眼の不便さは「あるある」だらけ
私は44歳頃、営業先でいただいた名刺のメールアドレスが読めなくなったとき、自分が老眼になったのだと気づきました。
当時は仕事で英語の辞書を引くことも多かったのですが、その文字もぼやけてきて、「ああ、自分も年を取ったのか」と寂しさを感じつつ、不便さに負けてついに老眼鏡を購入することにしました。
初めて老眼鏡をかけた瞬間、かすんでいた文字が鮮明によみがえり、思わず感動したのを今でも覚えています。以来、私はすっかり眼鏡なしではいられなくなりました。
しかし、老眼鏡は1本で一万数千円。複数持つ余裕はなく、家に忘れてしまったときの不便さといったら大変でした。そこでやむを得ず、100均で安いものを複数買い、カバンや家のあちこちに置くようにしたのです。
さらに春のスギ花粉シーズンは苦労の連続でした。外出時は花粉症用メガネをかけ、電車に乗ればスマホを見るために老眼鏡へ掛け替え。まさに“掛け替え地獄”です。
面倒になって、スマホの文字サイズを最大にしたところ、同行していた若い営業たちから「ここからでも読めますよ」と大笑いされたこともありました。
極めつけは、大阪出張のときです。新神戸で飲んだ後、新快速に乗り込んだ記憶まではあるのですが、気づけば深夜0時半、滋賀県の瀬田駅。メガネはなくなっていました。
結局、新大阪のホテルまでタクシーで約25,000円、さらに老眼鏡の買い直しと、踏んだり蹴ったり。しかも100均メガネでは長時間の仕事に耐えられず、出張先でのメール対応もままならないという大失敗でした。
こうして私は、老眼というものの不便さを、嫌というほど思い知らされてきたのです。そしてこのときまでは、「老眼とは一生付き合うしかない」と完全に諦めていました――しかし、後に白内障手術との出会いが、私の人生を大きく変えていくことになります。
第2章 実は「白内障」が進行していた
私は50代前半までの数年間、地方営業を一人で担当していました。このため正直に言うと、エクセルは加減乗除レベル。ITリテラシーはほとんどゼロでした。
ところが50代後半になると突然、20名ほどの事業部横断の販売部を任されることに。毎日、大量の数字を扱う必要がありました。
最初は関数やピボット、VLOOKUPといった用語すら知らず、まさに体力勝負。夜10時まで残業し、帰宅後も午前1時までパソコンと格闘する日々で、目は常に酷使されていました。
そのうち、光視症や飛蚊症が出始め、眼科を受診。診断は網膜裂孔。日帰りレーザー手術で事なきを得ました。

出典:いしゃまち 家庭の医学情報
しかし2回目のレーザー手術後、医師から思いがけない言葉を告げられます。
「あなたの場合、急性緑内障になる可能性があります」
急性緑内障とは、房水(角膜と水晶体の間の液体)の出口である「隅角」が狭くなることで、眼圧が急激に上がり網膜を圧迫する病気です。強い頭痛や目の痛みを伴い、放置すれば1週間ほどで失明に至ることもある恐ろしい病気。網膜は一度傷つくと再生できません。
私の場合は加齢によって水晶体が厚く前にせり出し、隅角が狭まっていました。さらに白内障の濁りも始まっていたのです。


そして医師から提示された予防策は、意外にも「白内障手術」でした。
白内障とは、加齢で水晶体が白く濁り視界がぼやける病気。手術では濁った水晶体を取り除き、代わりに眼内レンズを挿入します。眼内レンズは天然の水晶体よりずっと薄いため、隅角が広がり、房水の流れもスムーズになるとのことでした。

しかも近年は技術が進み、近くにも遠くにもピントが合う「多焦点眼内レンズ」が登場。片目あたり30〜50万円と高額ですが、老眼の改善効果もあると聞かされました。
突如現れた“急性緑内障”という不安な言葉、目にメスを入れる手術への恐怖、そして数十万円もの出費。私の前には、これまで以上に高いハードルが立ちはだかっていたのです。
第3章 決断の理由とレンズの選び方
医師から提示されたのは、大きく分けて「単焦点レンズ」と「多焦点レンズ」という二つの選択肢でした。
単焦点レンズは健康保険が適用され、費用も抑えられます。遠くはよく見えるようになりますが、近くを見るときには老眼鏡が必要。言い換えれば、老眼の不便さからは完全には解放されません。
一方、多焦点レンズは自費診療となり、片目で30〜50万円と高額です。しかし、近く・中間・遠くと複数の距離に焦点を合わせられるため、スマホもパソコンも運転も、ほとんど裸眼でこなせるようになります。

私の場合、左目は子供の頃からの遠乱視で視力が低く、網膜が多焦点レンズに対応できないため単焦点一択でした。一方、右目は典型的な老眼。単焦点でも多焦点でも選べると言われました。
もちろん迷いました。費用は決して安くない。けれど「また老眼鏡を掛け替える生活に戻るのか」と思うと、決断は早かったのです。
「どうせ手術するなら、老眼も一緒に解決したい」
そう考え、右目は多焦点レンズを選ぶことにしました。
片目で約50万円。確かに高額です。しかし、術後の生活を体験すると、その価値は計り知れません。辞書を裸眼で読める。スマホの文字を拡大しなくても見える。運転免許の更新も裸眼で通る。老眼で悩んでいた日々から解放され、生活の自由度は格段に上がります。
「高額でも生活が変わる」――これが、率直な実感です。
ただし、多焦点レンズは健康保険の対象外です。手術なので民間の医療保険は出るものの「なんとか安くならないものか」と病院の事務スタッフに尋ねたときに教えてもらったのが、現役の今だからこそ使える医療費控除。その存在を知ったとき、ようやく安心できました。
第4章 手術の実際と体験したこと
「目の手術」と聞くと、多くの人は不安を感じると思います。私も最初は「痛いのでは?」「怖いのでは?」と身構えました。
しかし実際には、点眼薬のような麻酔をかけるので痛みはほとんどありません。強いていえば、手術前の消毒で使う薬が少し目にしみたことが、一番の「痛み」だったかもしれません。
手術中は目を開けたままの状態ですが、何をしているのかはほとんどわかりません。レンズを入れる前は、まるでプールの底から水面を見上げているような感覚で、景色がぼやけていて治療の様子は分からないのです。
そして、新しいレンズが入った瞬間――視界が一気にクリアになった感覚を今でも鮮明に覚えています。痛みよりも「見えるようになった驚き」のほうが大きく、安心して受けられる手術だと実感しました。
白内障手術は、全国で年間およそ166万件(令和4年度)も行われている一般的な手術であり、その方法もすでに確立されています。成功率も非常に高いと後から知り、あらためて安心したことを覚えています。
第5章 手術後の生活の変化
手術の翌朝、眼科で眼帯を外した瞬間に最も驚いたのは、自分の指の「指紋」が見えたことでした。指は目に近すぎて老眼ではピントが合わず、かといって遠くもぼやけていた私にとって、これは新鮮で感動的な体験でした。
さらに家に戻ってからの驚きは、裸眼で本やスマホが読めること。これまで必須だった老眼鏡が不要になり、ちょっとしたメモ書きやメール確認のたびに「眼鏡を探す」煩わしさから解放されたのです。
視力検査の結果も劇的に改善しました。手術前は裸眼で0.1しか見えなかった左目が、手術後には0.8まで回復。右目も1.0と改善。免許更新も裸眼で問題なくクリアでき、生活の自由度は一気に広がりました。
もちろん、良いことばかりではありません。夜間はライトや街灯がにじんで見える「ハロー現象」(光がリング状に広がるように見える)が起こります。最初は夜の運転が少し怖く感じましたが、時間とともに慣れ、今ではほとんど気にならなくなりました。

また、数年後には「後発白内障」と呼ばれる再び視界が白くかすむ現象が起こる可能性もあります。ただし、これはレーザー治療で5〜10分ほどの短い処置で改善できると説明を受けており、過度な心配はいらないと感じています。
こうした注意点はあるものの、総じて言えるのは「裸眼で生活できる喜びは想像以上」だということです。老眼鏡に振り回される日常から解放されたことは、私にとって本当に大きな変化でした。
ただし、この変化の裏には高額な費用がある。その負担を軽くしてくれたのが医療費控除でした。
第6章 費用面の不安と「医療費控除」という光
多焦点レンズを選ぶとき、やはり最大のハードルは「費用」でした。私の場合は片目で約50万円。しかも自費診療なので健康保険は使えず、医療保険の対象にもなりません。正直に言えば、最初に聞いたときは「さすがに高すぎる」と感じました。
「老眼鏡から解放されたい」という思いは強いものの、この金額を前にすれば誰だって迷うはずです。この記事を読んでくださっている方の中にも、同じ不安を抱えている方が多いのではないでしょうか。
そんな私にとって大きな救いになったのが「医療費控除」という制度でした。現役世代であれば、確定申告を通じて支払った医療費の一部が税金から還付されます。つまり「高額でも払いっぱなしではない」ということです。
検査を受けた日、待合室にいた多くの方は70代、80代。ある女性は、すでに視界が白く濁り、ガスコンロの炎が青く見えなくなってから白内障検査の受診をされたとのことでした。
年金暮らしになってからでは税金の還付額もごくわずか。現役のうちに手術を決断したことは、医療費控除の面から見ても意味があったと感じています。
この仕組みを知ったとき、私は初めて「これなら今すぐ挑戦してみよう」と安心できました。
制度の詳細や実際の申請方法については、次回の記事で詳しくお伝えします。ここではまず、「医療費控除という光がある」ということだけ覚えていただければと思います。
第7章 まとめと次回予告
白内障手術によって、私は老眼の不便さから解放されました。裸眼で読書やスマホができるようになり、運転免許の更新も裸眼でクリア。日常生活の質は大きく変わりました。
もちろん、費用は決して安くありません。しかし「医療費控除」という制度があったからこそ、私は思い切って決断することができました。
大切なのは、こうした治療はあくまで医療行為であるということ。必ず信頼できる医師と相談し、自分の目の状態に合った最善の方法を選んでいただきたいと思います。
次回は、私が実際に経験した 歯科インプラント治療の体験記 をお届けします。
「高額すぎるのでは?」「痛いのでは?」「トラブルはないの?」――街の看板やテレビCMではなかなか見えてこない、リアルな費用や治療の実態を、私自身の体験をもとに率直にお話しします。 同じように目や歯で悩む方の参考になれば嬉しく思います。
そして10月13日の有料記事では、制度の裏側や申請して初めてわかった「医療費控除の真実」を、体験談ベースでさらに掘り下げてお伝えする予定です。ぜひ続けて読んでいただければ幸いです。
参考文献・出典一覧
- いしゃまち「網膜裂孔」
- こうづき眼科「急性緑内障発作」
- こうづき眼科ブログ「なぜ白内障手術が緑内障予防につながるのか」
- こうづき眼科「多焦点眼内レンズ」
- ふくおか眼科「手術後の夜間、多焦点レンズの見え方」
本記事は筆者の体験談をもとに執筆しています。正確な診断・治療については必ず医師にご相談ください。
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定年準備中の64歳サラリーマン。
実体験をもとに、定年後のお金・健康・暮らしについて発信しています。 同じ立場の方が、少し楽になるヒントを届けたい。


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