第1章. はじめに
40代後半で上の両奥歯4本を失い、50代前半には両側ブリッジの入れ歯と付き合う生活が始まりました。最初は「仕方ない」と思っていましたが、日常の小さな不便が積み重なり、いつの間にか大きなストレスになっていました。

まず困ったのは発音。特に息が上あごに抜ける“か行”が難しく、営業中に気を抜くとかつぜつが悪いしゃべり方になってしまいます。
さらに、ガムやお餅は上あごのブリッジ部分の金属にくっついてしまい、食べられなくなりました。
また、腰のある讃岐うどんを食べに行ったときに入れ歯を忘れてしまい、噛めないことに気づきました。お店の近くまで来ていたのに引き返す──そんな情けない経験もありました。
あまりの不便さに「インプラントはどうですか?」と地方の歯科医に聞いたこともあります。しかし当時は「上の歯は骨が薄いのでボルトが入らずNG」と言われ、一生入れ歯と付き合うしかないのだと半ば諦めていました。
第2章. インプラントを勧められた瞬間
コロナ禍のある日、リモートワークの気分転換に久しぶりに入れ歯を付けてゴルフ練習場へ行きました。スイング中に噛み締めた瞬間、「バリッ」と音がして、ついにブリッジを支えていた5本目の歯が割れてしまったのです。入れ歯をしばらく使わないと、歯のない部分にずれて合わなくなるそうです。
都心の歯科医からは「もうブリッジを掛ける歯が残っていないので、インプラントしか選択肢はありません」と宣告されました。観念するしかない──でも、いったいいくらかかるのだろう?車が1台買えるくらいの金額なのか……不安が頭をよぎりました。
ただ、この歯科医は上の歯のインプラントも可能だと言います。上顎の骨が薄い場合は、上顎洞という鼻腔の奥の空間に特殊なセメントを入れて土台を厚くすれば、インプラントはできるというのです。以下ソケットリフト術という手術方法。

第3章. インプラントの選択肢と費用
提示されたのは、ネジ4本と歯5本分の費用、さらに上の歯の特別な手術料金を加えた見積もり。そしてメーカーは2社から選べるとのことでした。
- スイス製 ストローマン社 170万円
インプラント業界のガリバー。ほとんどの歯科で扱っており、転勤しても治療が継続できる安心感がある。 - 韓国製 オスラム社 157万円
価格重視ならこちら。最近は取り扱う歯科も増えており、アジア人の小さな顎に合う設計だという。
想像通り、1本あたり30万円ほど。まさに中古車1台分の値段です。調べてみると、オスラムは細い径のボルトで他の歯科医でも実績もあるとわかり、最終的に私はオスラムを選ぶことにしました。
第4章. 病院選びと見積の落とし穴
100万円を超える高額な治療。これまで数年間お世話になってきた都心の歯科医は腕がいいこともわかっているのですが、オフィスビルに入っており、テナント料も高そうです。
加えて、今後は10回以上通うことになるはず。ならば、東京隣接県の自宅近くで、もっと安く受けられる歯科があるのではないか──そう考えました。
そこで私はセカンド、サードオピニオンを求め、地元周辺で評判の良さそうな歯科を回ってみることにしました。
① 駅前ターミナルの○○インプラントセンター
まず訪れたのは地元のターミナルビルにある「○○インプラントセンター」。都心の歯科よりテナント料は安そうですし、ホームページには手術実績も多く掲載されています。期待しつつ見積をお願いしました。
- スイス製 ストローマン社 190万円
- 日本製 AQB社 140万円
ところが、同じストローマンでも都心より10%以上高額。しかも手術はソケットリフトではなく、切開の大きいサイナスリフト術になるとのこと。実際に手術を受けた方は、歯から目の周囲まで1週間腫れたという話も聞かされました。

出典元:品川御殿山 クレイン歯科
② 家の近所の歯科医
「痛くて高いなら選択肢に入らない」と思い、次は駅から離れた住宅街にある歯科へ。テナント料はさらに安そうでしたが、見積はまさかの結果でした。
- スイス製 ストローマン社 197万円
- スイス製 ノーベル社 197万円
- 右側はソケットリフト、左側はサイナスリフト。左側は術後に腫れやあざが出やすく、骨材が固まるまでは強く噛めず、大きなくしゃみもできないとのこと。
- さらにこの医院では機械がなく、実際の手術は銀座の病院に外注依頼──つまり地元では手術ができないと説明されました。
③ 都心の一等地に腕のいい歯医者がいる理由
ここで気づいたことがあります。都心の一等地はテナント料が非常に高いため、それを維持するだけの収益力が必要。そのため高額なインプラントや審美歯科といった自費診療に特化し、必然的に腕のいい歯科医や先進設備が集まる傾向があるということです。
前回の白内障のように、手術方法が長い年月をかけて確立され、どこでも同じ結果が得られるものなら郊外でも問題ありません。しかし今回の3軒を回って実感したのは、インプラント治療はまだまだ術者の腕や設備によって結果が左右されるということ。テナント料が安いからといって、必ずしも安くて良い治療が受けられるわけではないのです。
結局私は、「うちはソケットリフトで顔が腫れた患者さんはいませんよ」と笑顔で話してくれた。最初に相談した都心の歯科にお願いすることにしました。
第5章. 施術当日の記憶
オプションでお願いしていた鎮静麻酔のおかげで、施術中の痛みはまったくありませんでした。ただし「キリキリ」と骨にボルトをねじ込むときの音だけは、正直なところ怖かったです。
意外に痛みを感じたのは、骨補強材に混ぜるための手からの採血でした。自分の血液を補強材に混ぜることで骨の再生が促進され、治癒が早まり、手術の成功率や安全性が高まるのだそうです。
手術自体は1時間ほどで終了。4本のボルトを埋め込み、切開部分を縫合してその日の施術は終わりました。もっと苦しい時間が延々と続くものだと思っていたので、想像していたよりもずっとあっけなく終わった印象でした。
また、医師から説明のあった通り、手術後の腫れ、痛み、あざはまったくありませんでした。
そして、このインプラント手術には意外な効用がありました。それは、その後の歯科治療への向き合い方です。
「自分は歯の骨にボルトを打ち込んでも大丈夫だった。だから、このくらいの治療は平気だ」──そう思えるようになり、歯科治療に対する不安や恐怖心が薄れました。結果として、後の治療にも落ち着いて臨めるようになったのです。
その後、私の場合は途中で骨補強材の追加もありました。骨が完全に固まり、最終的に歯を装着して完成するまでには、約1年近い時間がかかりました。
第6章. 終わりに
インプラントが完成してからは、入れ歯の不便さから解放され、食事や会話のストレスが一気に減りました。大好きな讃岐うどんやお餅も問題なく食べられますし、営業トークも以前のように気を遣わずにこなせるようになりました。
ただし、一つだけ気をつけていることがあります。それは毎日のブラッシングです。ケアを怠ると「インプラント歯周炎」になり、歯肉が後退して最悪の場合はボルトが脱落してしまうこともあるそうです。私は通常の歯ブラシで磨いた後に、インプラント専用ブラシでも仕上げ磨きをしています。今ではすっかり習慣化し、まったく面倒には感じません。
そのおかげで、治療から2年経った今もインプラントは全く問題なく機能しています。
もちろん治療費は高額で、公的健康保険や民間の医療保険の対象外でした。しかし実はこのインプラント治療、医療費控除の対象になるのです。
次回の記事では、私が実際に行った医療費控除の申請方法を無料で解説します。そしてその先の有料記事では、申告して初めて気づいた「制度の裏側と落とし穴」、病院では教えてもらえない実務のコツを詳しくお伝えします。
定年後の準備は第2の人生へのプレゼント。さあ始めましょう
おすすめ関連記事
👉 高額なインプラント治療費を支えるには「節税」も重要。会社員でもできる節税法をまとめています。

👉 インプラント同様、白内障手術も高額になりがちですが、医療費控除で負担を減らせます。実体験を紹介。

👉 医療費で出ていくお金が多いときこそ、ふるさと納税で賢く節約。生活を豊かにする仕組みを活用しましょう。


定年準備中の64歳サラリーマン。
実体験をもとに、定年後のお金・健康・暮らしについて発信しています。 同じ立場の方が、少し楽になるヒントを届けたい。


コメント