実家の片づけ(前編)——資産確認と“片づけ方針”が9割決める

家族
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はじめに

私の場合は、母が骨折したことで突然「実家が空き家」になってしまいましたが、50~60代の方であれば、親御さんが急に亡くなられて家が空くケースも決して珍しくありません。

それまで何度も笑い合った場所が、親がいなくなるだけで一気に“静まり返った空間”へと変わってしまう。 子どもの頃の思い出が詰まっているのに、どこか物悲しい――そんな気持ちになる方も多いと思います。

長年親が暮らしてきた場所を、すぐに片づけるのは気が引けますよね。 「落ち着いたらやろう」「時間がある時に……」と、つい後回しにしてしまうお気持ち、痛いほど分かります。

私は1年間で360冊ほどオーディブルを聴いていた時期があり、その中で“空き家問題”についての本も数多く耳にしました。 そこで知ったのは、実家を長く放置してしまうと、次のようなリスクが一気に高まるという現実です。

  • 人が住まないと風通しが悪くなり、老朽化が急速に進む
  • 固定資産税など、費用だけがかかり続ける
  • 無人の家は不法投棄・放火・不法侵入などのターゲットになりやすい

こうした背景から、私たち家族も悩みながら“一歩”を踏み出しました。 この記事では、実家が空き家になったその日から、どのように判断し、どう行動していったのかをできる限りリアルにお伝えしたいと思います。 同じ世代で同じ悩みを抱える方の、少しでも参考になれば幸いです。

第1章 なぜ、まず「資産の棚卸し」から始めたのか

家族の思い出が詰まった実家が突然“空き家”になると、誰しも気持ちが追いつかず、行動が止まってしまいます。
私たちも同じでしたが、まず最初に「今回のゴール」を家族全員で共有しました。

母が気に入った老人ホームで、100歳までお金の心配なく安心して暮らせること。

このゴールを明確にしたことで、「実家をどうするか」は感情だけで判断せず、冷静に考える必要があるとわかってきました。


①なぜ“お金の棚卸し”が最初なのか

親が元気なうちは、お金の話を切り出すのは気まずいものです。
「財産を当てにしていると思われたくない」という気持ちもあり、つい避けがちです。

しかし、今後の生活や介護の方向性を決めるには、
“現在の資産状況を正しく知ること”が避けて通れません。

そこで、兄弟全員で相談し、母の了承を得て、
実家にある通帳・保険証券・不動産の契約書などを一つひとつ整理していきました。

この作業は誰か一人が欠けると不信感が生まれる可能性もあるため、
全員で取り組んだことが結果的にとても良かった と感じています。


②実家は「売る? 貸す?」──判断の軸になった“お金寿命シミュレーション”

整理してわかった資産の全体像と毎月のキャッシュフローをもとに、
実家を「売るべきか」「貸すべきか」を判断するための
“親のお金寿命シミュレーション” を作りました。

これを行ったことで、

  • どの選択肢が母にとって最も安心か
  • 何年お金が持つのか
  • 賃貸運用が成立するのか

といったポイントが、一気にクリアになりました。


■ シミュレーションの詳細はこちら👇

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第2章 “売る or 貸す”を冷静にシミュレーションした結果

私たちのキャッシュフローの分析では、一見すると「実家を売却し、その売却資金を投資信託などで運用。そこからの収益で施設費用を賄う」というパターンが最も合理的に見えました。

実は、相続後の空き家を売却する際には、譲渡所得から最大で3,000万円の特別控除が受けられるという制度があります(いわゆる“空き家特例/居住用財産の特例”)。

* ただし、この特例の適用には以下のような条件があり、誰もが対象になるわけではありません。

  • 被相続人が亡くなる直前まで「一人暮らし」であった家屋であること
  • 建物が昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること(耐震基準の問題など)
  • 令和6年以降の譲渡で、相続人が3人以上の場合は控除額が2,000万円に制限される可能性があること

つまり、「空き家特例」は強力な節税手段ですが、“例外”や“落とし穴”がある。 我が家の場合、実家は母屋だけでなく、アパート・飲食店・工場など“賃貸・事業用不動産”を複数抱える複雑な構造。 そのため、単純に“3,000万円控除で丸もうけ”という見通しは、制度要件の観点から厳しい——と判断しました。

さらに大問題だったのは、長年営業を続けてきた店子さんたち── 飲食店や工場などの方々──に対する立退き料や移転費用、新しい施設の敷金礼金、営業補償、慰謝料などを支払わねばならず、場合によっては
1件あたり数百万円、あるいは1000万円単位になる可能性があった、という点です。

  • 移転費用
  • 新施設の敷金・礼金
  • 営業補償
  • 慰謝料・迷惑料(家賃の1年分など)

これらをすべて含めると、売却による“手取り”が大きく目減りする可能性が高く、シミュレーションでは「売る」より「貸す(賃貸運用)」の方が現実的かつ安定的、という結論に至りました。

加えて、母と店子さんの間には長年の人間関係もあり、「できるだけこれまで通り営業を続けてもらいたい」という兄弟間の意向も一致。 結果として、実家を賃貸に出す方向で話を進めることにしました。

ただし、そのためには「貸せる状態=居住可能かつ清潔な状態」に整える必要があります。 つまり、片づけ・不要物の処分などの準備が不可欠――ということで、次のステップは“片づけ”に決まりました。

第3章 片づけの2つの方式—外注か、自力か

築50年・3階建て・居住面積110㎡の実家には、どの押し入れや納戸にも“半世紀分の荷物”がぎっしり詰まっていました。
兄弟で手分けしても、とても短期間で終わる量ではありませんでした。


①最初に検討した「全面外注プラン」

最初に上がった案は、すべてを専門業者に任せる“フル外注方式”でした。
しかし、見積もりは 総額200万円ほど

遺品整理や空き家整理は、荷物量に応じて費用が跳ね上がるため、こうした金額は決して珍しくありません。
とはいえ、今回のゴールである

「母のお金を100歳まで持たせる」

という方針に照らすと、この出費はあまりにも大きい。
私たち家族は、できる限りコストを抑えつつ、実家を“貸せる状態”に仕上げる必要がありました。


②結論として採用したのは「ハイブリッド方式」

私の自宅から実家までは車で約30分という距離。
この立地を活かし、最終的に次のような “自力+部分外注”のハイブリッド方式 を採用しました。

  • 自力パート: 私と家内で通ってゴミを分別・袋詰め
  • 外注パート: 大型家具や廃棄物の最終処分は業者に依頼

この“できる部分は自力・重い部分はプロ”の方式を取ることで、最終的な総費用は
フル外注の1/10ほど に抑えることができました。

もちろん母や兄弟には何を捨てていいか?何を残すかを5回は聞いて処理を始めました。


③ 業者選びは「口コミの透明性」で選ぶ

空き家整理の業者は、ネット検索では玉石混交。
価格の相場がわかりづらく、トラブル事例も少なくありません。

そこで私たちは、
口コミが実名・評価とセットで表示される『暮らしのマーケット』 に絞って業者を探しました。

  • 評価数
  • 過去の利用者のコメント
  • 写真付きレビュー
  • 価格の明朗さ

これらの情報が揃っているため、安心して依頼先を選ぶことができました。


第4章 まずは“価値がある物”から処理する:古物商に買い取り依頼

実家の片づけを始めてすぐに直面したのが、想像を超える“物量”でした。
40リットルのゴミ袋がなんと 90袋

3階建ての家を朝から晩まで何十往復もし、これを1週間続けると、
夕方には体が動かなくなるほど疲労困ぱい。
メルカリやハードオフに持ち込む余力など、とても残っていませんでした。


①まずは「価値がある物」を見極める

そこで、兄弟の友人でもある信頼できる古物商に査定をお願いしました。
悪徳な買い取り業者の話もよく聞きますが、知人であれば安心して任せられます。

いきなり全部捨ててしまう方法もありましたが、

  • 万が一、高価な物があれば?
  • 思い出の品の扱いは慎重にしたい
  • 兄弟から自分だけ貴重なものを持っていたと思われる

という気持ちから、まずは “買い取れるものがあるか” を確認する方針にしました。


② 現実は厳しい——昭和の品々は、ほとんど値段がつかない

押入れには昭和40〜50年代の品が山ほど眠っていましたが、
結論は非常にシビアでした。

「価値のあるものはありませんね」
——バンいっぱい積んで、査定額は 3万円

特に衝撃だったのは、
子どもの頃に「これは高かった」「大事にしなさい」と言われていた品々——
着物、置物、記念品などが ほぼ値段ゼロ だったこと。

ここで痛感しました。

思い出の価値と、現在の市場価値はまったく別物だということ。


③悪徳押し買い業者が“老人の着物に目をつける理由”

古物商と話す中で、悪徳業者の手口がよく理解できました。

「お着物を高く買い取りますよ」と甘い言葉で家に上がり、
最終的には 貴金属を安く買い叩く“押し買い” に持ち込む——。

昭和の着物が買い取り額ゼロに近いことを知っているからこそ、
この“価値ギャップ”につけ込むのだと、改めて実感しました。


④昭和レトロ品は「別の場所で価値を持つ」

古物商の方は、置物や提灯なども大量に引き取っていきました。
「こんなガラクタ、どうするんですか?」と聞いたところ、

  • 昭和レトロのドラマ撮影現場
  • 資料館・記念館の展示物
  • 舞台小道具

として活用されるとのこと。

“昭和の暮らしの記憶”として、また別の形で価値を持つのは、どこか救われる思いでした。


第5章 “押入れ・納戸地獄”との戦いが本番だった

一人暮らしの高齢者の認知症の進行度を見る指標のひとつに、
「床に物がどれほど置かれているか」というものがあります。
物が散乱するほど片づけが難しくなり、認知機能の低下が疑われる——という考え方です。

しかし、92歳の母が暮らしていた実家は、廊下も通路もいつも通りきちんと整えられていました。
母は今でも頭がしっかりしていて、家を歩くたびに「さすがだな」と感心していたほどです。


①“片付いた家”の裏に潜む、押入れと納戸のブラックボックス

ところが——。
押入れや納戸の扉を開けた瞬間、状況は一変しました。

棚の内部には収納引き出しがびっしり組み込まれ、
その中には “50年分の人生の断片” がぎっしり詰まっていたのです。

  • 子どもの頃に作った粘土細工
  • 制服
  • 写真や資料
  • ギフトの食器類
  • 記憶にある物、ない物、思い出の品々

「親世代の“捨てない文化”がこれほどまでに積もっていたのか」
それがまざまざと可視化された瞬間でした。


② 40リットル × 90袋。感傷に浸る暇もなく進めるしかなかった

こうして出たゴミは、
40リットル袋 × 90袋。

アルバムなども、一冊一冊見ていたら到底終わりません。
胸がチクっと痛む瞬間はありましたが、
1週間で片づけるには “迷ったら入れる” しかありませんでした。


③父のこだわりの茶室——そして「思い入れ vs 実用」の難しさ

父は生前、道楽で実家にこだわりの茶室を作っていました。
畳の一部には、紺色の美しい 日毛氈(ひもうせん) が敷かれていて、
私にとっても「父の象徴」といえる品でした。

正直、これは捨てづらかった。

ところが、古物商の方はそれを見た瞬間、
何の迷いもなくスッと剥がし、荷物に積み込みました。

理性的に考えれば、賃貸に出す家に日毛氈は“単なる残置物”。
でも、家族はどうしても思い入れが邪魔をします。
だからこそ、第三者の存在は必要で、
機械的に、感情を排して進めてもらうことが片づけを早く終わらせるコツなのだと痛感しました。


④階段60往復 → 筋肉痛 → スクワットへ。実家片づけは自分の未来を見せてくれた

3階建ての実家を荷物を持って何度も往復し、
1週間で60往復以上。
当然、足が筋肉痛になりました。

「散歩だけでは筋肉はつかない」
「このままでは自宅の階段すら辛くなる」

そう感じて、片づけをきっかけに 毎日スクワット30回 を習慣化しました。
すると、その後の作業では筋肉痛からすっかり解放されました。

そして、ふと気づいたのです。

“親は30年後の自分の姿。介護は自分のシミュレーション。”

親の暮らし方、体力の衰え、家の管理、モノへの思い。
実家の片づけは、まさに

30年後の自分の姿を先に見せてくれる体験


しんどい作業の連続でしたが、その中には確かに
小さな達成感や学びが積み重なり、どこか不思議な充実感がありました。

そして私は、この経験を
「きっと、これから同じ状況を迎える誰か」に伝えたいと思うようになりました。

実家の片づけで感じたこと、学んだこと。
それらを記録し、同じ世代の誰かの背中をそっと押せれば——。

そう思ったことが、
このブログ『サラリーマン定年後の準備』を書き続ける
大きなきっかけの一つになったのです。

後編に続く

定年後の準備は第2の人生へのプレゼント。さあ始めましょう。

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