母の骨折体験記①――「まさか、うちの母が?」突然の大腿骨骨折と私の決断

家族

◆ 第1章 大腿骨骨折は“誰の家にも起きる”現実

親の大腿骨骨折は、家族の生活を一瞬で変えてしまいます。
私たちの親世代では「それまで元気だったのに、骨折をきっかけに歩けなくなり、そのまま老人ホームへ」という話をよく耳にします。

日本整形外科学会によると、2020年には年間19万人が大腿骨を骨折し治療を受けました。
2040年にはその数が30万人に増えると予測されています。

一方、2024年現在、団塊の世代の中心である75歳人口は134万人に達しています。
この人口構造を踏まえると、高齢者の4人に1人が人生のどこかで骨折治療を受ける計算になります。

つまり、大腿骨骨折は特別な人だけに起こるものではなく、
“どこの家庭でも起こり得る問題” と言っても過言ではありません。

そして、その現実は私の家にも訪れました。
——92歳の母が、突然立てなくなったのです。


◆ 第2章 92歳でも元気だった母。だからこそ油断していた

3年前、私の母は92歳。
女性の平均寿命88歳を超えて、いまだに元気そのものでした。
頭もはっきりしており、3階建ての家で一人暮らし。
さらにアパートの大家としての仕事もこなし、家事もきちんと自分でやる。
家族全員が「このまま100歳まで元気に行くだろう」と本気で思っていました。

しかし、その年に入ってから、少しずつ変化が出ていました。
「朝、寝起きに3階から降りるとき、ふらついて怖い」と言い始め、
やがて1階に布団を敷き、そこで寝るようになったのです。

気にはなっていました。
ただ、“年だからそういうこともあるだろう。今まで大丈夫だったし”と、
私もどこかで軽く考えていたのです。

その油断が、後になって重い意味を持つことになります。


◆ 第3章 その電話は突然だった──立てなくなった母と救急車の“ガチャ”

ある土曜日の朝。
私の携帯に、突然母から電話がかかってきました。
ずっと気にかかっていたことが、とうとう現実になった瞬間でした。

「着替えようとして尻餅をついた。痛くて立ち上がれない——」

急いで実家へ向かうと、兄弟2人がすでに駆けつけていました。
母はトイレの前でしゃがんだまま、どうしても立ち上がれない状態でした。

病院へ連れて行こうかと考えましたが、以前医療関係者から
「緊急時は素人判断せず、救急車を呼ぶのが一番安全」
と教わっていたことを思い出し、迷わず救急車を呼ぶことにしました。

ただ、救急車は“今、受け入れ可能な病院”を探して搬送します。
いわば病院ガチャ。
どこに運ばれるかは、本当にわからないのです。

しかも当時はまだ新型コロナウイルスが完全には収束しておらず、
受け入れ先がすぐ見つかるかどうかも不安でした。

しばらくして救急隊員から
「○○病院に向かいます」
と告げられ、サイレンを鳴らした救急車は母と兄弟を乗せて出発しました。

残された私と兄弟は車でその後を追いかけながら、
「○○病院…聞いたことないな。どんなところなんだろう」
と口々に不安を漏らしました。

そしてスマホでレビューを検索。
表示された評価は——5点満点中2.0。

「え、大丈夫か…?」
車内の空気が一気に重くなりました。

しかし、実際に運ばれてみると、建物は古いものの先生は経験豊富で、
看護師さんも対応が丁寧。
入院後の食事も良かったと母は後から話してくれました。

病院ガチャと言われる中で、今回は“当たり”だったのです。


◆ 第4章 骨折、即手術のはずが…母にまさかのコロナ陽性

検査の結果は、やはり大腿骨骨折でした。
高齢者の骨折は自然治癒がほぼ期待できず、
できるだけ早い段階で人工骨頭などを入れる手術が望ましいと言われています。

ところが、ここで予想外の事態が起きました。
——母がコロナ陽性。

その瞬間、手術は延期。
母は隔離病棟へ移され、私たち付き添っていた兄弟3人も濃厚接触者となり、
1週間は病院に入ることすらできなくなりました。

そこで、妻と娘に状況説明と手術結果を聞きに行ってもらうことにしました。

手術自体は無事成功しましたが、現代の病院は病床に余裕がなく、
長期入院はできません。
最大2カ月。その間に

  • リハビリ病院へ転院する
  • 老人ホームへ入居する

という現実的な選択を迫られます。

リハビリ病院とは、大腿骨骨折や脳梗塞などの急性期治療を終えた患者が、
日常生活に戻るために集中的なリハビリを行う専門病院です。
入院期間は最長で約3カ月。

私たち兄弟は、「母なら努力家だし、リハビリ病院に行けば再び歩けるようになるはず」
と希望を抱いていました。
しかし母自身は、骨折の影響で尿失禁もあり、
「もう大変なリハビリはしたくない。老人ホームに入りたい」
と希望しており、そこには親子間の葛藤が生まれました。

追い打ちをかけるように、主治医の先生もコロナに感染。
1週間、診断も説明も止まるという“想定外の事態”が続きました。

そんな中、私たち兄弟は連日、
リハビリ病院や有料老人ホームのサイトを探し、
LINEで情報を共有しながら検討を続ける毎日でした。

刻一刻と時間が過ぎていく中で、
私たち家族は次の選択を迫られることになりました。

(つづく)

次回は、今回の流れを踏まえた
「大腿骨骨折時の判断フローと全体像」を整理します。

定年後の準備は第2の人生へのプレゼント。さあ始めましょう。

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