序章:なぜ「施設選び」はこんなに難しいのか?
前回は、母が大腿骨を骨折し手術を受けたあと、家族が「2か月後の退院に向けて次の転院先を探さなければいけない」という現実に直面したお話をしました。
この“次のステップをどうするか”という判断には、リハビリ施設や老人ホームについてある程度の知識が必要です。しかし私たち家族も最初はまったく理解できず、兄弟3人で手分けして調べながら、仕事の合間に情報を集めるのは正直かなりしんどい作業でした。
そこで今回は、同じ事態に直面したときに「ああ、こういう状況ならこの施設が合いそうだな」と思い出していただけるよう、リハビリ施設と老人ホームの種類を“地図のように”整理してまとめました。この記事が、皆様の判断の一助になれば幸いです。
そもそも、リハビリ施設や老人ホームと聞くと、
「なんか暗い」「よくわからない」「できれば関わりたくない」
そんな印象がありませんか?
私自身も正直、どこか“おばすて山”のような遠い世界の話だと思っていました。
しかし母の骨折をきっかけに、現実として“施設選びをしなければならない局面”に立たされたとき、初めて強く感じたことがあります。
「施設の種類、多すぎて意味わからん!」
有料老人ホーム、特養、老健、サ高住…。 それぞれ名前は聞いたことがあるのに、どんな特徴があって、どんな人に向いているのかすら説明できない。最初は情報の多さに完全に迷子になりました。
調べていくと、施設は多いのではなく、それぞれに“はっきりした役割”がある専門施設だということが分かってきました。問題は、その全体像が一般人には見えにくいこと。
そこでこの記事では、その違いを一目で理解できる“地図”としてまとめ直しました。
前回の記事をまだ読んでいない方は、状況を知っておくと流れが分かりやすくなります👇
第1章 まず最初に知っておくべき「リハビリ施設」の種類」
リハビリには“段階”があります。
どの段階にいるかで、選ぶべき施設はまったく変わります。
●急性期病院
手術直後が中心。命を守ることが最優先。
●回復期リハビリ病院
集中的なリハビリで日常生活に戻るための期間。
歩行訓練、筋力トレーニング、ADL改善がメイン。
●生活期リハビリ
通所リハビリ(デイケア)など、
「生活を維持するためのリハビリ」。
●老健(介護老人保健施設)
回復期→自宅への“中継地点”。
医師・看護師・リハビリ職がいて、
集中的なリハが行える“介護と医療の中間施設”。
第2章 老人ホームって何が違うの?主要7種類を“役割”で理解する
🧓 老人ホームの主要な分類(50字前後の説明付き)
| 種類 | 概要 | できること・特徴 |
|---|---|---|
| 有料老人ホーム | 生活支援・介護・医療のバランス型。民間でサービス内容や料金が幅広い。 | 介護サービス、食事、レクリエーション、医療連携 |
| 特別養護老人ホーム(特養) | 公的施設で低料金。要介護3以上が対象で入居待ちが多い。 | 24時間介護、看取り、生活支援 |
| 介護老人保健施設(老健) | 在宅復帰を目的としたリハビリ中心の中間施設。長期入居は不可。 | 集中リハビリ、医師常駐、在宅復帰支援 |
| サービス付き高齢者向け住宅(高サ住) | 安否確認・生活相談が基本。必要に応じ外部介護サービスを利用。自由度が高い。 | 自立〜軽介護向け、外部介護の導入可 |
| グループホーム | 認知症高齢者が少人数で共同生活。家庭的で落ち着いた環境。 | 認知症ケア、生活リハビリ、自立支援 |
| 介護医療院 | 医療と介護が一体の長期療養施設。老健の“医療版”の位置付け。 | 医療管理、長期療養、看取り |
| ケアハウス(軽費老人ホーム) | 自立〜軽度介護向け、公的色が強く費用が比較的安い。 | 生活支援、食事提供、見守り |
| 住宅型有料老人ホーム | 介護は外部サービス利用。自立〜要介護まで柔軟に対応。 | 訪問介護・訪問看護を自由に組み合わせ可能 |
| 特定施設入居者生活介護 | 有料・サ高住などで“介護付き”として国に指定された施設。 | 常駐スタッフによる介 |
① 老人ホーム選びのポイントは何?
老人ホームは「入る場所」ではなく、「目的に合わせて選ぶ場所」です。
リハビリを優先するなら老健、医療管理が必要なら介護医療院、生活の安心を重視するなら特養や介護付き有料。
自立度が高い場合はサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)が候補になります。
まずは「何のために入るのか」をはっきりさせることで、選ぶべき施設は自然と絞れてきます。
② 看取りができる老人ホームはどこ?
すべての老人ホームが看取りに対応しているわけではありません。
特養、介護医療院、介護付き有料は看取り体制が整っており、いわゆる「終の住処」となりやすい施設です。
一方で、老健やサ高住は看取り対応に限りがあるため、最期まで同じ施設で過ごすのは難しい場合があります。
③ 特養、介護医療院、介護付き有料の3つはどう違うの?
「どれも看取りできるなら何が違うのか?」という疑問がよく出ます。
ポイントは生活の自由度と医療の重さです。
- 特養:費用を抑えられ、重度の介護にも対応。入居待ちが長いことや多床室が多い点が特徴。
- 介護医療院:医療管理が手厚い長期療養型施設。生活の自由度や楽しみは少なめ。
- 介護付き有料老人ホーム:費用は高めだが、食事や住まい、イベントなどが充実。自由度が高く個室が基本。
まとめると、医療寄りか生活寄りかで選ぶ施設が大きく変わります。
第3章 どれを選ぶ?入居先を迷わないためのフローチャート
私自身、最初はネット検索で断片的な情報を集めながら必死で整理し、ようやくこのフローチャートにたどり着きました。正直、はじめからこれを知っていれば、あの混乱はもっと早く抜けられたと思います。
ここでは、複雑に見える施設の種類を「はい/いいえ」で進めるだけで一発で整理できる形にまとめました。今どの段階にいるのか、そして次にどの選択肢があるのかを理解するための “地図” だと思っていただければ嬉しいです。
【スタート】
- 日常生活で介助が必要ですか?
├── いいえ →(自立)
│ 自立向け:サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
│ ケアハウス(軽費老人ホーム)
│
└── はい →
2. 医療的な管理(点滴、褥瘡、酸素など)が必要ですか?
├── はい → 介護医療院・医療特化型の介護付き有料老人ホーム
│
└── いいえ →
3. 集中的なリハビリを受けたいですか?
├── はい → 介護老人保健施設(老健:在宅復帰目的)
│
└── いいえ →
4. 認知症がありますか?
├── はい →
│ 少人数ケア:グループホーム(認知症対応)
│ 医療ニーズ高→介護医療院 or 介護付き有料
│
└── いいえ →
5. 長期入居の安心が最優先ですか?
├── はい → 特別養護老人ホーム(特養)
│ ※要介護3以上
└── いいえ →
介護付き有料老人ホーム(民間)
このフローチャートを使うと、「今の状態ならどの施設が合うのか」が一目で分かります。複雑に感じていた老人ホーム選びも、目的と状態を軸にすると驚くほどシンプルになります。
次の章では、実際に私たち家族がどのように判断したのか、その経緯を具体的にお話しします
第4章 うちはどう判断したのか?実例でわかる選択の基準
母の場合、リハビリの回復状況や生活動作のレベルを一つずつ整理しながら、どの施設が最適なのかを家族で話し合いました。
- 身体の回復状況:手術の痛みは落ち着いたものの、入浴や排泄は介助が必要。
- 歩行能力:歩行器につかまればゆっくり歩ける程度まで回復。
- 認知面:私たち家族と変わらないほどクリアで問題なし。
- 夜間の見守り:排泄があるため必要。
- 自宅復帰の可能性:3階建ての段差の多い実家では生活が難しく、家族も日中の介助ができない。
この5つを総合的に判断したとき、特に重要だったのは次の2点でした。
- リハビリをどこまで行うべきか
- 長期の生活をどこで送るのが安心か
ここで家族の意見と母の意見にズレが生まれました。私たち兄弟は、元気な頃の母の性格を知っています。「頼るのが嫌いで、何でも自分でやりたい人」だからこそ、少しでも歩行能力を取り戻してほしい。だから回復期リハビリ病院を強く希望しました。
一方の母は、排泄が思うようにいかない現実に落ち込み、「無理してリハビリを頑張らなくてもいい、老人ホームのほうが気が楽」と話すようになりました。
最終的に、どちらの道が正しいかではなく、実際にリハビリをするのは母本人という事実に立ち返りました。母の「自分のペースで生活したい」という気持ちを尊重し、アパート収入で何とか月額費用をまかなえるという事で介護付き有料老人ホームを探すことに決めました。
第5章 見学してわかった「本当に大事だったポイント」
いくつかの施設を見学して感じたのは、
ホーム選びは“制度や設備の比較”だけでは決められないということです。
最後に決め手となったのは、もっと肌感覚に近いものでした。
ここでは、実際に私たち家族が
「これは絶対に見ておくべき」と実感したポイントをまとめました。
① 結局は“人”
職員さんの声のトーン、表情、入居者への接し方。
これが施設の雰囲気をほぼ決定します。
短い見学時間でも
・すれ違う職員さんが笑顔で挨拶してくれるか
・名前で呼んでいるか
・入居者に急かさず、寄り添っているか
こうした“微差”が、実際に暮らすと大きな差になります。
② 医療体制は要チェック
夜間の対応、緊急時の搬送先、看取りの可否。
これらはパンフレットでは分かりにくい部分です。
夜間に看護師がいるのか、オンコール対応なのか、
どの病院と連携しているのか。
看取りまで行う覚悟がある施設は、説明がとても具体的です。
③ リハビリの質は施設ごとに大きな差がある
同じ「リハビリあり」でも、内容は千差万別です。
・週に何回あるのか
・1回の時間はどれくらいか
・個別リハビリなのか、グループなのか
このあたりは見学でしか分かりません。
うちは母の歩行能力を少しでも維持したかったため、
ここは特に重要な確認ポイントでした。
④ 家族のキャパシティ(介護の余力)
どこまで家族がサポートできるかによって、選べる施設は大きく変わります。
- 仕事をしながら通うのは現実的か
- 夜間の呼び出しに対応できるか
- 家族の負担が偏らないか
先日、母が病院へ緊急搬送された際も、私たち家族はすぐに呼ばれました。施設に入ったからといって「預けっぱなし」になるわけではありません。むしろ、いざというときは家族が駆けつける場面が必ずあります。
だからこそ、施設の質だけではなく、自宅から片道1時間程度で駆けつけられる距離かどうかはとても重要です。家族が無理なく続けられる体制こそが、長く安心して暮らし続ける鍵になります。
⑤ 他の入居者の介護度
意外な盲点ですが、ここは実際に住むうえでとても重要です。
自分の親と同じくらいの介護度の方が多いほうが、
生活リズムや活動量が合いやすく、ストレスが少ないからです。
逆に、介護度が極端に違う人が多い施設は、
生活リズムや価値観が合わず孤立してしまうケースもあります。
◎まとめ:見学して分かったのは「生活する場所を見る目」が必要ということ
パンフレットでは分からない部分が
実は決定的に重要でした。
- 部屋の匂い
- 入居者の表情
- 職員さんの動き
- 生活の流れるような様子
こうした“空気感”は、現場でしか分かりません。
終章:親が安心できる場所を選ぶために
「見学の大切さ」は頭では分かっていても、実際に老人ホームを探し始めると驚くほど大変です。
- どこから探せばいいのか
- どんなポイントで比較すればいいのか
- 資料請求はどうやるのか
- 見落としがちな注意点は何か
私たち家族も、最初はまったく分からないところからのスタートでした。
次回は、これらを分かりやすくまとめながら、私たちが実際に使って「助かった」と感じた、
施設を一覧で比較できる便利なサービス
についても紹介します。
「どの施設を選ぶか」という決断は、親の人生だけでなく、家族の生活にも大きく影響します。
今回の経験を通じて強く感じたのは、
施設選びは、突然その瞬間が訪れ、待ってはくれない
ということです。
だからこそ、種類や仕組みを早めに理解し、いざというときに最短距離で最善の選択をできるようにしておくこと。
それが、未来の自分や家族を確実に助けてくれます。
定年後の準備は第2の人生へのプレゼント。さあ始めましょう。
紹介関連記事3選
① 母の骨折体験記① ―「まさか、うちの母が?」突然の大腿骨骨折から始まった家族の決断
今回の記事の前編にあたるエピソード。入院~リハビリ判断の背景が分かり、どんな家庭にも起こり得る“介護の始まりの瞬間”を記録した体験談です。

② 老人ホーム選びの準備と条件整理|骨折→リハビリ→施設探しの現実(前編)
“具体的にどう施設を探すのか?”
要介護度・予算・医療対応・家族距離など、
実際に使った比較ポイントを前編として詳しくまとめています。
シリーズ第3話です。
③60代の住まいの問題 ― 終の棲家をどう選ぶか?戸建て・マンション・移住…すべて検討した実録
老人ホーム選びと同じく「どこで暮らすか」を考える重要テーマ。住まいの判断軸や、後悔しない選び方のリアルがわかる記事です。

定年準備中の64歳サラリーマン。
実体験をもとに、定年後のお金・健康・暮らしについて発信しています。 同じ立場の方が、少し楽になるヒントを届けたい。




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